どんな映画でも面白く観てしまう元気で天真爛漫な映画ファン(俺)が、ほのぼのとした語り口で映画感想文を綴ります。

静かにはじまる地獄へのカウントダウン。『ヘレディタリー/継承』

2022/02/01
 
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「ヘレディタリー」というワードには、「遺伝」とか「親譲りの」といった意味があるらしく、つまりこの映画は「何か」を親から継承する映画である。

なんかもうこれだけですでに怖いというか、親から引き継がれる厄介事なんてのはもう子どもにとってはホラーでしかない。

それが莫大な借金とかでも怖いし、もともと呪われた家系だったってのも怖い。

『ヘレディタリー/継承』の物語は、まさにその親(母親)のお葬式から始まるのだ。

母親が亡くなりました、さて母親から娘に継承されたモノとは?

 



これぞオカルト映画の最高峰

オカルト映画の恐怖というのは、殺されたり、追いかけられたり、モンスターが暴れたりといった物理的なものではなくて、知らぬ間に日常が少しづつ変化していき、ひっそり淡々と取り返しのつかない状況へと導かれてゆくという恐怖だ。

たとえば、『エクソシスト』『シャイニング』など、取り憑かれた家族が徐々に狂っていく恐怖もあれば、日本映画の『リング』『残穢』のようにある行動がきっかけで呪われてしまうという恐怖もある。

これらの映画で被害に遭う憐れな人たちの共通点は、どの作品もじっくりと時間をかけて(リングの場合は一週間)絶望に向かっていき、気付いたときには「もう遅い」パターンが多いこと。

一部始終を知ってる我々観客は「早く事の重大さに気付いて!」なんてヤキモキしながら観たりするのである。

そういったオカルトモノが大好きな俺が、過去もっとも恐怖した作品のひとつに『パラノーマル・アクティビティ』というホラー映画がある。

定点カメラで部屋の一室を撮影していたらヤバい怪現象が映ってましたよといった心霊動画ホラーで、最初はちょっとした気のせいかとも思っていた不思議な出来事が、意味不明にエスカレートしていってついにとんでもないことになってしまうという内容だった。

まさに、些細な変異の数々によって日常がじわじわと侵食されていく、俺のもっとも好きなタイプのオカルトホラー。

 

で、今回観た『ヘレディタリー/継承』はまさにそのタイプの最高峰ともいうべき大傑作だった。

とにかくオープニングから、ある家族に不吉なことが起ころうとしていることがなんとなくわかるような不穏さに満ちている。

とはいえ、何が起こっているのかその全貌はまったく掴めないわけで、不気味なカメラワークや画面に映る意味深なアイテム、不快感を煽るBGMなどによって、その不安が観客の心を侵食していくというシステム。

 

つまり、稲川淳二が始終ずっと「やだなあ、やだなあ」って言ってる感じと言えばわかりやすいであろう(反論却下)。

こうして、序盤で観客が全員例外なく稲川淳二になったところで、静かにはじまったはずの地獄のカウントダウンは、急に勢いを増してさらなる絶望を畳みかけてくるのだ。

 

 

人間の心をえぐる恐怖

『ヘレディタリー/継承』の凄いところは、人間の心の闇とか、後ろめたい罪の意識とか、そういった登場人物の精神的な弱さが丁寧に描かれているところ。

悲劇に遭う一家が精神的に追い詰められ、正気と狂気のはざまで「正しいこと」をしようと足掻くが、結局すべての選択を間違ってしまう。

というか、気づいたときには選択肢などまるで無くなっているという怖さ。

ホラー映画のくせに、登場人物たちの行動や言動、表情などすべてに説得力があり、終盤はとんでもないブッ飛び展開になるのにリアリズムすら漂ってしまう。

 

この巧妙な演出力は、長編デビューの新人監督とは思えない繊細さだ。

 

さらに、恐怖演出のためならば容赦ないショック描写にも躊躇しないタフな作風にも、個人的に感銘を受けた。

キャストも顔面力の強い俳優陣を意図的に起用していて、これもまた映像のヤバさに繋がっているので、とにかく登場人物の顔だけでゾッとする迫力になっているのがすげえ。

 



まとめ

恐怖度で言えば今年ナンバーワン、いやマジでオカルトホラーの新たな金字塔になるのではないかという大傑作。

ホラー映画好きであれば必見だし、ホラー好きじゃなければぜったいに観ちゃダメ。

鑑賞後の数日間は、夜中にトイレに起きたら暗闇にきっと何かが見えるので、自己責任で。

 

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