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【10.14両国大会】両国の奇跡その①【KING OF PRO-WRESTLING】

 
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獣神サンダー・ライガーと鈴木みのるの一戦は “奇跡” だった。

「獣神」ではなく、プロレスラー山田恵一との対戦を望んだ鈴木と、それに応えたライガー。

そして「殺し合い」と明言された荒々しい暴力の中にも、美しさと儚さをも感じさせる芸術のような大喧嘩。

これを “奇跡” と呼ばずしてなんと呼ぶのだろうか。

一線を退く決意をしたライガーを、もう一度奮い立たせようと怒鳴り、殴りつける鈴木の姿から漂う一抹の寂しさ。

またひとり、鈴木の前からかつての盟友が去ろうとしている。

最前線で闘い続ける鈴木が、そこから去るライガーに負けるわけがない。

だからこそ、鈴木は最後の闘いに “あの頃のライガー” を指名したのだ。

フィニッシュに捧げるのは、落とすタイミングやフックの深さまで鈴木みのるにとってのこだわりを意識した最高級のゴッチ式パイルドライバー

 

そして試合後、鈴木はリング上に横たわるライガーに向かって座礼をする。

 

道場でのトレーニング前後に行う基本的な礼儀作法であり、鈴木自身はその行為に意味など無いと嘯くかもしれないが、ライガーは鈴木の真意をしっかりと理解し受け止めたはずだ。

 

「鈴木! ありがとな」

 

殺し合いの先にある言葉としてはあまりにも滑稽なのに、どう考えてもこの言葉しか適切なセリフが浮かばない。

ここで闘っていたのは、憎しみ合うベテランレスラーの2人ではなく、共に強さを求めて切磋琢磨していたあの頃の2人だったんだ。

 

 



最高の舞台で殺し合う男たち

獣神サンダー・ライガー VS 鈴木みのる

 

10.14両国大会『KING OF PRO-WRESTLING』で、獣神サンダー・ライガーの神話は最終局面のクライマックスを迎えた。

ロールプレイングゲームでいうところの最終ダンジョン、いままで積み重ねた経験値、培ってきたスキル、頭に叩き込んだ知識をすべて総動員して挑むべき超難関だ。

最終ステージで待つラスボスは、かつてお互いが若者だったころに同じ釜の飯を食い、同じ夢を描いて切磋琢磨した後輩。

いつの日か「強さ」を求めすぎ、悪の道へと進んだあげくに「王」を名乗ってすべてを破壊しつくす暴君と化した男である。

別々の道を歩んだ2人は、一方は英雄、一方は悪党として最前線で闘い続けたが、ついに英雄ライガーは戦場を退く決意をする。

 

鈴木みのる

「何勝手に楽しく余生過ごそうとしてんだよ」

「ライガーは脱落者だ。このプロレス界で生きる力を失った。だから辞めていく、だから消えていく。俺がトドメ刺してやる」

 

悪に染まった王は、卑劣な手段で英雄の残り少ないプロレス人生を破壊しようと画策するが、ついに英雄の怒りに火をつける。

 

獣神サンダー・ライガー

「知ってんだろ、ライガー怒ったらどうなるのか!」

「両国は試合じゃねえぞ! 殺し合いだ!」

 

甦る鬼神ライガー、降臨するバトルライガー。

伝説の強き存在を次々と宿していくライガーの姿を見て、嬉しそうに笑う鈴木みのる。

まるでバットマンとジョーカーの関係のように、その似たモノ同士でありながら正反対な生き方を選んだ者同士の、不思議なキズナと運命が2人を激しい闘いに駆り立てる。

 

鈴木「アイツをおちゃくってると楽しいもん」

 

自分を「クソガキ」と呼べる数少ない現役レスラーのひとりであるライガーの存在は、鈴木にとってどれだけ貴重なのか。

実況席を襲い、マスクをはぎ取り、本名を名指しで挑発し、この決戦にたどり着くまでのシリーズを通して、丁寧かつ慎重に紡いできた因縁のドラマ。

 

鈴木は「悪」として英雄の最後を見送ることしかできない。

 

ならばとことんライガーを怒らせて、とことん強いライガーを引き出すことこそが役割であり、鈴木は見事、それをやり遂げたのだ。

 

 

 

過去のドラマが集約された一戦

 

入場してきた獣神サンダー・ライガーの姿は、対ヘビー級仕様であり、2002年パンクラス横浜文体のリングに上がったときを彷彿とさせるバトルライガー

オープンフィンガーグローブはもちろん無い。

ここは新日本プロレスのリングであり、ライガーも鈴木も純粋なるプロレスで決着をつけなければならないからだ。

しかし、試合の立ち上がりはまるで総合格闘技の試合かのような緊張感に包まれていた。

スタンディングでのけん制、グラウンドに入ってからの細やかな攻防。

マットに寝転がりお互いを挑発し合う様子を見せたり、各々エスケープを取り合ったグラウンドの展開は、まさにポイント制導入時代の初期パンクラスを彷彿とさせた。

と思えば、お互い場外に落ちて鉄柵やパイプ椅子で痛めつけ合う闘いになり、鈴木は容赦なくライガーのマスクに手をかけるなどのラフなプロレスが展開する。

鈴木の両腕を鮮やかに極め、角度のある垂直落下式ブレーンバスターでKOを狙うライガーの姿は、完全に「殺しにきている」恐ろしさに満ちていたが、鈴木もまた、ライガーをあえて追い詰め、何かを呼び覚まそうとしているように見えた。

プロレスであり、格闘技であり、その両方とも違う “何か” でもある。

この一戦は、2人にしか作れない世界観なのだ。

 

鈴木「俺とアイツの17年、いやいやいや、32年、32年の、男のケジメよ」

 

試合後の鈴木は言った。

鈴木とライガーがパンクラスで闘ってからの17年ではなく、2人が出会ったときからの長い長い32年のケジメ。

だからこの試合はこんなにも美しかったのか。

 

ライガー「ここまで俺をブチ切れさせたのは、近年まれに見る。アイツぐらいじゃないか、ここ何年かで。ここまで俺の怒り、頂点にブチ切れさせたのは。そのことに対して『ありがとう』だ」

 

2020年1月、東京ドーム大会での引退を宣言し、そのカウントダウンもあとわずかというところで、ライガーは盛大にブチ切れた。

誰よりも傍若無人で、誰よりも性格の悪い後輩によって。

 

燃やせ、燃やせ、怒りを燃やせ。

 

怒ってナンボの獣神を、最後にこれ以上ないほど怒らせることのできる男。

ライガー引退のこのタイミングに、鈴木みのるがいて本当に良かった。

 



鈴木みのるはずるい

 

実況席のゲスト解説者たちは、ことごとく涙腺崩壊。

棚橋さんの「ずるいね」というひとことがすべてを物語っていた。

鈴木みのる、本当にずるいよ。

あれだけ挑発して、恨みにも似た因縁を持ち込んで今日を迎えて、最後に礼を持ってライガーを送るなんて。

鈴木とライガーの絆をまざまざと見せつけられた闘い。

俺は試合を観ながら、身体を震わせてしくしくと泣いた。

記憶の中に永遠に刻み付けなくてはならないこの一瞬を、何度も映像を戻しながら繰り返し繰り返し見続けた。

 

 

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Comment

  1. まぐお より:

    はじめまして。
    いつもはこそこそとひとりデヴォンさんのブログを読んで楽しんでいるのですが、今日は初めてコメントさせて頂きます。

    昨日、両国でこの試合を見ていたのですが、リング上で鈴木選手が座礼をした瞬間、心臓のあたりがドンッ!となり、写真を撮る事すら忘れ、ずっと目が離せませんでした。本当に素晴らしい試合で、デヴォンさんのブログを読んでまた今泣きそうになっております。。

    私もこの試合はしっかりと記憶に残しておくよう、これから何度も何度も見直すと思います。非常に気高く、美しい試合でした。

    • devonyamaoka より:

      どうも! まぐおさん! ようこそいらっしゃいました! 3カウント奪ったあとの表情を見て、何かやりそうだなと思いましたがまさか座礼とは! って感じでしたね。ここまで考えてライガーへの挑発を続けていたのかと思うと、鈴木の見事な華の添え方に感服してしまいます。しかも、それをしっかり受け止めての「ありがとな」ですから。ライガーもさすが一流です。おそらく何度見ても、ラストで泣いちゃう試合ですね。プロレスって美しいですね。

  2. リック より:

    怒りの炎に風を吹き込み更なる大きな炎を生み出す2人。
    感動という言葉すら足りないほどの美しさ、この試合の素晴らしさを表現できる言葉が見つかりません。

    最も印象に残ったのは座礼前の鈴木みのる。
    「あぁ…終わっちまったなぁ」
    世界一性格の悪い男にとってライガーを怒らせるのは本当に楽しかったんでしょう。そんな楽しい時間が終わってしまう。
    あの表情にはそんな寂しさが滲み出ているように感じました。

    鈴木みのるのファンで良かった。
    本当に心からそう思える試合でした。

    • devonyamaoka より:

      どうも! ほんと、飯塚さんの引退のときといい、鈴木みのるは毎回言葉にできないほどドラマチックな演出をしてくれますね。俺もブログにこんな記事を本当は書きたくなかったんですが、もうヤケになって泣きながら書きましたw そうなんですよ。実は座礼する前の鈴木の表情がとってもいいんですよね! 鈴木にとってライガーは思いっきりケンカができる貴重な存在ですから。もっとやり合っていたかったというのはあるでしょうね。鈴木みのるのファンって最高ですね!

  3. アイアンフィンガー より:

    いや!棚橋さんの言うことがすべてですね。ボス!ズルいですよ!こんなん泣かない方が無理ですって!この後のオスプレイとELPも相当やりづらかったでしょうね!でも違うベクトルでものすごい試合を見せめてくれたのは流石です!
    ただこの日はやはり第4試合に限ります!二人の絆しかと見せて貰いました。
    私はこんなおっさんズラブが大好きだ!

    • devonyamaoka より:

      どうも! 実況席が棚橋さんもミラノさんも山崎さんもみんなベソかいてたのが印象的でしたw ほんとずるい。そのあとのELPオスプレイは、ライガー鈴木のあとなのにしっかりと存在感出してて本当に凄かった。まさにおっさんずラブでしたね。テレビドラマの100倍キュンキュンするおっさんずラブでしたw

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