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【6.25仙台その①】ストロングスタイル・イズ・デッド【KIZUNA ROAD 2019】

 
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かつてアメリカの人気ロックミュージシャン、レニー・クラヴィッツは歌った。

『ロックンロール・イズ・デッド』と。

ロックは死んだ。いや、というよりこれは「ロックよ、お前はもう、死んでいる」というニュアンスであり、つまり自分がまだまだ全盛期だと勘違いしているロックンロールの経絡秘孔はいつのまにか破壊されており、すでに死んでいるんだよということを教えてあげている感じだ。

とはいえ、レニクラ自身が歌うその曲も思いっきりロックンロールだったりするわけで、要するに「いつまでも頂点にいると思ってんじゃねえぞ」というジャンルそのものへの警鐘のようなものであろう。

 

それを踏まえて、6.25『KIZUNA ROAD 2019』仙台大会のメインイベント終了後のザック・セイバーJr.のマイク締めを考える。

 

ザック「ストロングスタイルはもう死んだ。俺が救世主だ」

 

完全に世紀末救世主伝説さながらのセリフではないか。

ザックは、ストロングスタイルを殺しに来たのではなく、死に絶えたストロングスタイルを救いに来たということだろうか。

 

ザック「YOSHI-HASHIの野郎が、俺をピンフォールするとでも思ったか? 冗談じゃない。そんなことは絶対に起こらない。ブリティッシュヘビー級チャンピオンをナメるな」

 

ごもっともな意見である。

冷静に考えれば、ザックの勝利は揺るぎないものだったはず。

なのに俺たちは「ヨシハシが勝つかも?」などと少しでも思ってしまったわけで、これがまさに “ストロングスタイルの終焉” を証明しているではないか。

 

ストロングスタイルは、ただ頑張っていれば報われる世界ではない。
強い者が勝つという実力主義の価値観でもある。

 

つまり、ヨシハシを倒すことで、ザックはストロングスタイルの価値観を守ったと言ってもいいだろう。

ストロングスタイルが死んだ日、救世主たるザック・セイバーJr.が現れた。

敗北したヨシハシは、自らの運命に感謝すべきだ。

これほど偉大なるプロレスラーに、付け人として仕えることができるのだから。

 



冷静なる王、ザック・セイバーjr.

ブリティッシュヘビー級王座戦
ザック・セイバーJr. VS YOSHI-HASHI

 

シリーズ最終戦のメインイベント、しかもタイトルマッチということもあり、入場の段階でヨシハシの表情には余裕がなかったように見えた。

一世一代のチャンス、そして絶対に負けられない闘いであるというプレッシャー(ハードルを上げたのはヨシハシ自身だが)のせいか、かなりナーバスになっていたような印象。

対するザックは、もはやメインもタイトルマッチも慣れているせいかリラックスしまくっている。

しかも、タイトル防衛戦&G1出場枠争奪戦という、ザックにとってリスキーでしかない条件の試合だというのに、笑顔さえ見せていたのである。

 

6.9大阪城ホール大会『DOMINION 6.9 in OSAKA-JO HALL』のタッグマッチで、ザックから金星とも言える3カウントを奪ったヨシハシは、王座挑戦が決定した次のシリーズ『KIZUNA ROAD 2019』後楽園ホール大会のイリミネ―ションマッチにおいても再び勝利を納めた。

そこで飛び出したザックへの条件が、タイトルと一緒に『G1』の出場権利も懸けろというものであった。

ここで、なぜ挑戦者であるヨシハシが条件を出せるのか? という大きな疑問が生じ、さらにザックにはそれを受ける理由もメリットも無いというところに不気味さを感じぬ者などいなかったであろう。

しかし、そんな疑問など知らんとばかりに、あっさりと意見が受理されてしまう。

俺たちファンは思う。

なぜだ? ザックが危険な懸けを迫られ、ヨシハシは何も懸けないなんて、そんな不公平があっていいのか?

 

いいのである。

 

試合後のバックステージコメントでザックはこう言い放った。

 

ザック「俺はベルトにプラスして『G1』の出場権まで懸けてやった。こんな釣り合わない条件はないよな。俺にとって、何のメリットがあるんだ? 公平じゃないよな。どのみち俺が勝つのはわかってたから懸けたんだけどね」

 

ザックは自らの実力に絶対の自信があり、こんなもの「懸け」でもなんでもないと思っていたからこそ条件を飲んだのだ。

まさに王者の貫禄。俺たちごときがどうこう言うような問題ではなかった。

史上初のG1エントリー争奪戦でありながら、結果的にそれはまったく無意味な懸けに終わったのである。

 

ザックは自身のペースで危なげなく試合を展開し、容赦のないサブミッション地獄でヨシハシを追い詰める。

ロープ付近でも関係なくサブミッションが仕掛けられる恐怖。
一瞬でも隙があれば、ブレイクするまでの間にヨシハシのヒザ関節にダメージを与えていく。

もちろんヨシハシも、この運命の闘いに懸ける想いの強さを証明するかのように、いつも以上に気合の入った攻撃を魅せた。

重たい逆水平チョップがザックをふらつかせ、深く決まったバタフライロックにはたまらずロープブレイク。

しかし、15分を超えたあたりにはほとんどすべての技を出し尽くしてしまったヨシハシは、後半から目に見えてスピードも技のキレも落ちていく。

蓄積されたダメージと精神的疲労、ザックの失速をしらないグラウンドのスピード感に翻弄されるヨシハシ。

最後はあっけないくらいにあっさりと新技(しかもその場でイキナリ思いついたかのような複合関節技)でギブアップ負けを喫してしまうのであった。

つまり、なんの問題もなくザックは王座を防衛した。

 

 

ヨシハシ・ザ・ギャンブラー

 

この試合、敗けて失うものが大きかったのはザックのほうである。

対してヨシハシには何もなかった。

絶対に負けられない立場なのはヨシハシではなくザックの方だったのだ。

一瞬で多くのモノを手に入れようとしたヨシハシは、逆に負けられないザックの「強さ」「したたかさ」「巧さ」を引き出してしまった。

ザックは試合後にこう言った。

 

ザック「チャンスが少ないYOSHI-HASHIだから、ワンチャンスですべてを手に入れたいっていうのはわかるけど」

 

ワンチャンスをモノにするという意味でヨシハシはギャンブラーなのかもしれない。

しかし、勝ち続けるギャンブラーは無謀な懸けなどしない。

 

“物事が変わるのは一瞬”

 

もはやこの言葉は呪いの言葉である。

一瞬で変えなければという強迫観念がヨシハシを支配し、自身のポテンシャルを狭めていたのかもしれない。

たった一度のチャンスに懸けるのもいいが、もっとチャンス自体を増やすことに尽力することも必要なのではないか。

まるで競馬に全財産を懸けて大穴を狙うような、あるいは会社を辞めてその退職金を宝クジにつぎ込むようなことは世間一般では愚行とされる。

 

物事を一瞬で変えようとする生き方、ワンチャンスに懸ける生き方を止めることが、ヨシハシに今もっとも必要な変化なのかもしれない。

 

自分が発した言葉に縛られて3年を無駄にしたヨシハシ。

しかし今から軌道修正しても遅くは無い。

 

ザック「YOSHI-HASHI、あいつは俺とのギャンブルに負けた。ゼロから始めろ。俺のツケビトだな。そういうことだ」

 

G1出場権を懸ける代わりに、ヨシハシが負けたら俺の専属のヤングボーイ(付け人)になれと条件を出していたザック。

ヨシハシがこれを受けたという情報はない。

青森大会のバックステージで記者がそのことに触れた際には「負けたときのことは考えない」と言って逃げていた。

さて、敗北を喫したいま、その条件についてどう答えを出すのだろうか?

ザックにG1出場権を懸けさせた手前、無視はできないとは思うが、おとなしく承諾するとも思えない。

それなりのキャリアのある人間が負けた相手の付け人になるなど屈辱でしかないが、それでもこれはヨシハシが変われるチャンスになり得るような気もするので、よく考えて答えを出して欲しいものだ。

ただ敗北して終わるか? その敗北を未来に繋げるか?

 

ダービー「私はバクチ打ちだ。誇りがある。負けたモノは必ず支払います」

『ジョジョの奇妙な冒険』第23巻より

 



まとめ

 

試合後のバックステージ

YOSHI-HASHI「いまはもう、いま現在は何も、何もない・・・」

 

勘違いするなヨシハシ、「いま」じゃない。

お前には最初から何もなかったんだ。

だからこそ、この敗北で何も失ってはいない(だって何も懸けてなかったんだから)

チャンスを逃したのではなく、いまこそがチャンスなのだと気づいて欲しい。

この敗北を糧にして、もう一度、変化を求めた決死の一歩を踏み出そうではないか。

そう、あの神戸のときのように。。。

 

 

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Comment

  1. デルピッポ より:

    現地で見てた限りそれなりに楽しめたメインでしたよ。ほぼザックのおかげですけどねw
    試合前半はヨシハシも頑張ってる印象でしたが、どんどんスタミナが切れていってましたね。まぁザックの完勝です。
    ヨシハシは本当にザックの付き人になるのかどうか…内藤に負けたら海外遠征行って来いと言われてた時も結局何もなかったし、今回もしれっとCHAOSのままと予想してます。
    ただ、ヨシハシのためを思うとザックの要求を呑んで付き人になったほうがヨシハシのストーリーもまだ先があると思います。うやむやでCHAOSに残ればレスラーとしてこれ以上の浮上はあり得ないし、岡が凱旋したり海野がYL卒業したりすればヨシハシのポジションなど無くなり第三世代や本間と同じ扱いになっていくでしょう。

    • devonyamaoka より:

      どうも! 現地は盛り上がっていたんですね。ザックの対応力の素晴らしさ、そしてヨシハシもそれなりに緊張感を持ってやっていたからこそ良い試合になったと思います。結果は普通でしたがw 付け人のハナシは無かったことにされそうな予感が大きいですね。ここでプライド捨ててザックの下につけば、マジで人生が変わると思うんですが、それができないのがヨシハシですからね。また、いつものようにパッとしない日々が続いて、忘れた頃に会社にチラッと推されて、みたいなのが続くのでしょうか。泣けますw

  2. リック より:

    やっとヨシハシから出てきましたか…

    何も自分から賭けなかったヨシハシ、例えるならば「拾った宝くじが大当たりすれば良いのに」というくらいのノーリスクハイリターンの精神。
    もしかしたらヨシハシ最大の勘違いは失うことをマイナスにしか捉えられないことかもしれません、何も無いということは何にでもなれるということ。ある意味でヨシハシほど選択肢のあるレスラーも他にいないはずです。
    鈴木軍に入ってザックに学ぶ。BCでジェイと組む。棚橋に師事を受ける。簡単に挙げてもこれだけあります。
    どれか一つ選ぶだけで大きく変わるのですが…ケイオスから抜けるのが余程怖いのでしょうかね。

    ザックは相変わらずの美しさ、知性溢れる毒舌がたまりません。
    G1でオカダから取ってイギリスでIWGPでしょうかね。そして東京ドームまで持って行ってドームで権利証を奪ったみのると…最近どうにかして鈴木みのるをドームメインに連れて行く妄想が止まらなくなってます笑

    • ばばば より:

      外から失礼します。

      “知性溢れる毒舌”

      コメントが秀逸ですな。このフレーズ、感動モノです^_^

      • devonyamaoka より:

        どうも! たしかに素晴らしいですね。知性があるからこそ、毒舌がただの悪口にならないってのがザックの品の良さに繋がっているんですね。

    • devonyamaoka より:

      どうも! ザック戦のときはヨシハシから出てましたw そうなんですよね。失う事をマイナスに考えているからこそ「物事を一瞬で変えたい」って言い続けているんですよねえ。どん底からならどんな可能性も出てくるんですが、そのことを教えてあげる仲間がいないんでしょうかね。チャンスをモノにできないってのは、「勝つ」っていくことだけじゃないんですよね。
      ザックはスマートでしたね。このシリーズにおいては毒舌もヨシハシの取り扱いもすべてスマートでした。この試合の立ち振る舞いで、今後の活躍は約束されたようなものですね。イギリスまでにどんな物語が用意されているのか期待。G1落選した鈴木のドームへの道、きっと凄い展開が待ち受けていると信じています!

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