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【6.9大阪その③】転生したらヨシハシだった件【DOMINION 6.9 in OSAKA-JO HALL】

2019/06/14
 
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意識を失ってからどれくらいが経っただろうか。

そもそも自分がなぜ意識を失うことになったのかもまったく思い出せない。

ここはどこなのか?

それほど広くはない控室のような部屋で、目の前にあるロッカーやテーブルの周りには誰ともわからない荷物がいくつか置かれている。

気付けば俺は、壁際の長椅子に座っていて、上半身は裸、しかもなにやらド派手な赤いタイツを履いているではないか。

おかしい。なぜ俺はこんな場所で、こんな格好をしているんだ?

しかも何やら左肩が異様に痛い。ケガでもしたのか? ケガ・・・・

そうだ、俺はさっきビールを買いにマンションの前を歩いていたんだ! そしたらもの凄い爆音と共に目の前に車が突っ込んできて・・・。

この肩の痛みは、そのときの交通事故のケガなのか? とするとここは病院?

「で、どうしますか?」

いきなり横から声がしたので驚いてそちらを見ると、40代前半くらいの小男が不思議そうな顔で俺を見ていた。

「え?」

「え?じゃないですよ。肩のテーピングです。どれにしますか?」

小男の手には、白と黒と赤の3種類の色のテーピングがあり、おそらくこの俺の肩の痛みを軽減するために巻くから色を選んでくれと言っているようだ。

タイツが赤だし、やっぱ赤だよな。

何も考えずに赤のテーピングを選択する俺。

「はいよ」と軽く返事をした小男は、器用に俺の肩にテーピングを巻く。痛みがどんどんやわらいでいく。

おお、やっぱりここは病院かな。多少汗臭い処置室だけど、まあ痛みが無くなるならなんでもいいや。

 

バンッ!

急にけたたましい音と共に部屋のドアが開き、派手なプロレスマスクをかぶった大男が現れたので俺は驚きのあまり立ち上がった。

知っている顔だ。いや正確に言うとテレビで見たことのあるマスクマンだ。

それは、新日本プロレスのレジェンドレスラー、獣神サンダーライガーだったのだ。

「ヨシハシ、そろそろいくぞ!」

そっくりさんなどではない。その声、喋り方、風貌、たたずまいとオーラ、どう見てもホンモノのライガーである。

「わあ、ライガーさん、はじめまして!」

「何言ってんだ! ヨシハシ、準備いいか? 行くぞ!」

ヨシハシって(笑) ライガーさんって初対面の人間にとんでもないボケを振ってくるんだなあ。とりあえずそのボケに乗っかったほうがいいのかな?

俺はもともとノリの良い性格でもあったので、とりあえずライガーさんのムチャブリに乗ってみることにして「わかりました!」と部屋を出ようとした。

そのとき、ドアの横に掛けられた鏡を一瞬見てしまい立ち止まる。

あれ? いま鏡に映ってたの、誰?

後ずさりしてもう一度鏡の前に立ち、自分の顔を恐る恐る確認する。

なんとそこに映っていたのは、いつもの見慣れた自分の顔ではなかったのだ。

どこにでもいる平凡なサラリーマン、恋人はなし、趣味も特にない、楽しみと言えばプロレスをネット観戦することぐらい、そんな地味な人生を過ごす中年男の姿はどこにも無い。

 

俺はまったくの別人になっていた。

 

そう、この日は新日本プロレスの上半期最大のビッグマッチ『DOMINION 6.9 in OSAKA-JO HALL』の開催日。

そしてこの場所は、まさにその会場、大阪城ホールの最深部にある選手控室だったのだ。

 

ま・・・まさか、そんな、俺は・・・俺は転生したのか?

 

しかもよりによってヨシハシに転生してしまったのだ!

 

 

 

① なりきりヨシハシ

 

俺が覚えている断片的な記憶と、いま置かれている状況を分析し、結論を出すとこうなる。

日曜の午後に、プロレス観戦時に楽しむためのビールを買いにマンションを出た俺は、高齢者の運転する逆マッスル暴走カーの事故に巻き込まれ即死。

ちょうど死ぬ間際に、なぜか俺は「ヨシハシはいつ裏切るのか?」という疑問について頭を巡らせていたことで、アホな神様が盛大に勘違いをし、俺の魂をヨシハシの中にぶちこんだのだ。

となると、俺の代わりにヨシハシの魂が死んだのであろうか? そのへんは不明瞭だが、とにかく俺はヨシハシとしての人生を余儀なくされたというわけだ。

マジかよ。

 

「おい! おい!」

 

あ、転生のショックに気を取られて、ライガーさんに呼ばれていることにまったく気づかなかった。

ここは入場ゲート前の選手たちのスタンバイエリア。

「おい、ヨシハシ、棒は?

 

「え?」

しまった! ヨシハシはいつも棒を持って入場していたっけそういえば。

俺は一瞬慌てた顔をしたが、ライガーさんは気にしていないようだ。もしかしたらいつものことなのかもしれない。

とりあえずライガーさんに謝って、急いで控室に戻る。

部屋の中を見渡すと、あっさりと見つかったのでホッとした。

如意棒を意識して作られた黒いアルミの棒。長さは1.5メートルくらいだろうか。思ったよりも長くて驚いた。

「お待たせしました!」

棒を手にスタンバイエリアのライガーさんと落ち合ったところで、良いタイミングでライガーさんの入場曲が流れた。

ついに出番だ。

 

入場口の階段を上がると緊張で膝が震える。一段上がるごとに開ける視界、煌びやかなライトが巨大な会場全体を縦横無尽に駆けめぐる。

花道に立つと照明が俺とライガーさんをとらえ、ひときわ高い歓声が上がる。大会場でのビッグマッチの雰囲気をレスラーの立場で味わう事ができるなんて最高だ。

ファンの中にはライガーさんのテーマ曲を歌っている人もいて、その熱い盛り上がりを身体全体で感じられる。

一歩一歩、しっかりと足を踏みしめリングへと向かう。大阪城ホールの花道の坂はテレビ中継で見ている印象よりもずっと急だ。神戸の二の舞は勘弁だな。いや、あれは俺じゃないし、そもそもダッシュしてないから大丈夫だろうけど。

観客からの野次や冷やかしなんかも覚悟していたが、これが意外と大人気だったので拍子抜けだ。

ヨシハシだから無理ゲーじゃんとか思ってたけど、会場人気は凄いんだよな。これは結構いい思いができるかも。

などとちょっとイヤラシイ考えも浮かんだが、次の瞬間にはすべて撤回したい気持ちでいっぱいになった。

リングに近づくにつれて、よく知っている怖い人の姿がはっきりと見えてくる。

鈴木みのるだ。なんで転生当日にこの人と闘わなきゃならないんだ。しかももう一人はザック・セイバー Jr.

肩のテーピング、一応しっかり巻いてもらったけど大丈夫だろうか。

かけられる声援に気分が高まっていた先ほどまでの心があっという間に沈み、ディープな不安の塊のように身体全体が重たい。

足かせでも付けられているかのような重い足取りでやっとリングにたどり着き、恐る恐るセカンドロープをまたぐと、すかさず尾崎リングアナがコールをはじめるので焦る俺。

やばい。名前のコールと共にコーナーに登って、なんか変なポーズで「わー」ってやらないといけないんだった!

タイミングなどわからないのでイチかバチか、急いでコーナーに駆け上り見様見真似で両手を広げてみたが、奇跡的にバッチリだった。

 

「わー!」

 

 

 

よし。決まった!

と満足気にコーナーから降りると今度はライガーさんのコール。間近で見るライガーさんのポーズに感動したのも束の間、背中に鈍い衝撃が走る。

なんと背後からザックが殴ってきて、俺はTシャツを脱ぐ間もなく場外に放り出されたのだ。

しまった! これは想定すべき奇襲だった! 盛り上がる会場の雰囲気と目の前のスターレスラーたちに飲まれ、さらに自身の境遇における現実感の無さも加わってまともな思考ができなくなっている。

しかしヨシハシは場外に落とされ慣れているのか、うまくダメージなく下に着地することができた。中身は違っても身体が覚えているということだろうか。

精神はシロウトの一般人でも、トレーニングで身に付けたスキルや体力は引き継がれているとは、この転生システムはなかなかありがたい。

ただし、その代わりケガや痛めている場所もしっかり引き継いでいるから、メリットもデメリットもあるということなのだが。

ザックは素早く俺の左腕を捉え、スタンディングで腕を決めてきた。さらにヨーロピアンアッパー。

痛みはある。しかし、鍛えられた身体のせいか、ダウンしたり戦意を喪失したりするほどのダメージではない。

俺とザックが対峙している場外は、リングを囲む幅2メートルほどの空間になっており、床には薄いマット、そこを鉄柵が囲み、鉄柵の外には実況席やスタッフ席、そのさらに後ろが観客席となっている。

客席が近いからか、ここではファンの歓声がとてもよく聞こえる。

「ヨシハシー!!」

俺を応援しているファンの声。こんな不甲斐ない俺を熱心に応援してくれている。そう思うと、普段の俺には無かったはずの闘志がメラメラと湧いてきた。

ヨシハシとして転生したのも何かの縁だ。

天然レスラー、ズッコケ戦士、物事を変えない男、鳴かず飛ばずのルチャドール、ヨシハシはスタンドで本体は「棒」、etc…

世間でいろんなことを言われているが、俺が中身になったことで、少しでもヨシハシの運命を良い方向に変えられるかもしれない。

幸いなことに俺は新日本プロレスのファンだ。俺の持つ知識を総動員してヨシハシの体力を利用すれば、この逆境を乗り越えられるはずだ!

俺のハートは砕けない! もちろん額も二度と砕くわけにはいかないんだ!

気付けば俺はザックに向かってエルボーを放っていた。バチっと首元に当たる感触があり、ザックはひるんだ。

いける!

そこから俺は、いつも新日本プロレスワールドで見ている通りに場外乱闘のシーンを再現して見せた。ザックの腹に蹴りを入れ、うずくまったら背中を攻撃。

そうだ。ファンも近いし、アレをアピールするには今がチャンス! と得意げにTシャツを脱いでみる。俺が選んだ赤いテーピングを見た観客の反応はどうだろう?

微妙だった・・・



② ヨシハシの恐怖

 

そこからは最悪だった。

自慢のテーピングへのファンの反応の悪さに意気消沈していたら、その隙にザックにテーピングを全部剥がされてしまった。

さらに、好き放題やられて(顔面を蹴飛ばされたり)大恥をかいたあげくに、なんと鈴木みのると対峙せざるを得なくなってしまったのだ。

またも想定すべき問題をド忘れしていたことに気付く。これはタッグマッチであり、相手はザックと鈴木の2人だった。

ファンとして何度も鈴木のプロレスを見たことはあるが、こうしてリング上で戦う相手として向かい合うとその凄みがまるで違う。

単なる闘志だけでは、この男に攻撃をしかけることなど無理だ。まとっているオーラ(というか殺気)に一瞬で怖気づく俺。

 

俺は一般人なんだ。鈴木みのると戦うなんて聞いてない!

こんな転生、フェアじゃない!

 

そんな泣き言、神への懇願も虚しく、俺は鈴木に思いっきり振り回されてコーナーに激突、すかさず串刺しフロントハイキックをお見舞いされた。

死んだ。俺死んだ。

さらにマットに座らされてのペナルティキックという鈴木お決まりのムーブである。

はいはい。もうひと思いに負けよう。そうすればこれ以上ひどい目に合わなくて済む。

そう諦めかけた瞬間、何者かに背中を蹴飛ばされた。ザックかなと思いきや、なんとパートナーのライガーさんではないか。

 

 

え、何? まさか、俺が別人だということがライガーさんにはバレてるのか?

転生したことなど誰も信じてくれないだろうから、俺は黙って運命を受け入れた。しかし、ライガーさんにはそれすら見通しだというのか?

いや待てよ? 「転生」という非現実&非科学的な突拍子もない事案は、転生を経験した者にしか理解できないはずである。

つまり、ライガーさん、あなたも転生者なのか?

 

単なる叱咤激励だった。

 

 

 

③ ヨシハシ、考える

 

ライガーさんの叱咤激励(というか暴力的指導)のおかげで、なんとかタッチすることができ、俺は赤コーナーで身体を休めることができた。

ここで、ライガーさんと鈴木みのるのベテラン同士の闘いを堪能するのもいいが、俺にはそんな余裕はない。

なんとかして、今日の試合を無事に終えなければならないのだ。

さらに、できることなら勝ちたい。だって後で控室に戻ってからのライガーさんが怖いんだもん。

よって、この時間を利用して作戦を考えなければ。

 

俺がザックに勝つには、カルマしかないか・・・いや、カルマは捕まえてから持ち上げるまでに時間がかかり過ぎるな。ザックのことだから、その隙に腕関節を取られるリスクが大きい。

バタフライロック? いやいや、ないな。ザックは身体が柔らかいし、そもそも関節技のスペシャリストをタップアウトさせようなどという愚かな考えは捨てた方がいい。

スワントーンボムは考えるまでもなく却下。

ロクな技がないじゃん俺。

そういえば、格下の選手がトップ選手を出し抜くには、丸め込みという手段がもっとも有効だよな。俺、丸め込めるかな?

まてよ? 俺、前に丸め込み技を編み出してなかったっけ? 2017年あたりに一度だけ使ったことのある、もはや都市伝説とまで言われている幻の技があった気が・・・

 

「ヨシハシ!」

 

いきなりの呼びかけに我に返ると、目の前で俺にタッチを要求しているライガーさんの姿が。

え、もう出番? 反射的にタッチしてしまい、相手側の青コーナーを見るとあちらも鈴木に代わりザックが出陣するところだった。

テクニシャンのザックを丸め込む。できるのか? この俺に!

しかしもう後戻りはできない。できるかできないかじゃない。やるしかないんだ!

 

 

④ ヨシハシの作戦

 

 

勝つことへの執念は素晴らしいパワーになる。

ついさっきまでは鈴木みのるの恐怖で逃げ出すことばかり考えていたのに、いまではなんとか勝ちたいと言う気持ちだけで身体がしっかりと動いてくれる。

プロレスとは肉体や技であると同時に、やはり精神がとても重要なのであろう。

心・技・体とはよく言ったものだ。

おかげで、ヘッドハンターや物干しざおドロップキックなどの技もスムーズに繰り出せた。

自分でやっといてなんだが、この物干しざおドロップキックは、相手をトップロープに引っかけてそこにドロップキックをくらわすわけだが、どういった原理で相手はロープに引っかかったままになっているのだろう。

自力で脱出できそうに見えるが、まあ俺は技を仕掛ける方だし、やられたことが無いのでわからなくていいか。

あまりにも攻撃がうまくいったので、ちょっと調子に乗って「あっぽーい!」などと叫んでしまったりしたわけだが、その掛け声がザックをイラっとさせてしまったようだ。

鬼の形相のザックに腕を取られ、怒りの腕ひしぎ逆十字固めを狙われてしまい焦る俺。
やばい。これが決まれば終わってしまう。

さあどうする? 一応は防御をしているが、ザックの関節技は細かい攻撃(指を一本づつ責めたり、脇腹をぐりぐりしたり)も駆使してじわりじわりと決めてくるアリジゴクのような怖さがある。パワーだけでは凌げないだろう。

俺は持っている情報を頭の中でこねくり回し、解決策・脱出法を思案する。

ここは技術的な試みではなく、精神的な揺さぶりをかけて攻略を目指したほうがいいかもしれない。

 

ザックと言えば「ヴィーガン」だ。

動物性の食物を一切食べない思想で、肉や魚はもちろん、卵や牛乳も摂取しないという菜食主義の上位互換みたいなやつ。

肉好きの俺からすれば理解不能な思想であるが、それが確固たる決意で課している主義であれば利用しない手はない。

俺は、今にも腕を決めてしまいそうなザックの耳元でこう囁いた。

 

「唐揚げ」

 

すると一瞬、ザックの締める力が緩んだような気がした。

そのときタイミングよくライガーさんがカットに入ってくれて、あっさりと腕十字がほどけたのだ。

間違いなく、あのひとことでザックの力は緩んだはずだ。

これはもしかすると、もしかするぞ!

ライガーさんの介入により、リング内に鈴木も入ってきて大混戦に。

なんとライガーさんは鈴木に、俺はザックにそれぞれ卍固めを決められるという最悪の事態になってしまった。

 

 

危機の連続である。

特にザックの長い手足から絡みつかれる卍固めはまったく身動きがとれなくなる。ロープまでも遠い。

 

「とんかつ」

 

俺のひとことに、またもザックのパワーが一瞬弱くなる。

俺はロープに一歩近づいた。

 

「やきとり」

 

また一歩近づく俺。

 

「親子丼!」

 

ロープを掴んだ! ブレイク成功!

 

困惑顔のザック。間違いない。俺の作戦は効果てきめんであった。

タネ明かしするまでもないと思うが、ザックが「ヴィーガン」であることがこの作戦のポイントだ。

「ヴィーガン」は動物を食べないが、その根底にあるのは健康志向ではなく、動物愛護の精神なのだ。

 

つまり、慈しむべき動物たちを無残に殺され調理された料理名を呪文のように唱えることで、ザックの精神に負のエネルギーを注入することに成功したのである。

 

闘いとは騙し合いのようなもの。相手のパワーやテクニックには及ばずとも、心を攻撃することで活路は開けるものだ。

自らの作戦の見事さに自惚れ、無意識に笑みをこぼしていた俺を見たザックは、さらにその怒りをヒートアップさせる。

 

そうだ、怒れ。ザック、お前がいつもやっている心理戦を、今度が俺が仕掛けてやる!

 

怒りにまかせて一直線に突っ込んでくるザック。パワーでは負けはしない! カウンターでラリアットを叩きこんでひるませた俺は、すかさずザックにカルマを仕掛ける。

もちろんこれは罠である。俺だってカルマが決まるなどとは微塵も思っていない。

ザックに「ヨシハシはカルマで決着をつけようとしているな」と思わせることが目的なのだ。

しかしザックもさすが抜け目がない。俺が何かを狙っていることが微かにわかったのだろう。後ろに回りこんでフルネルソンに捉えようとする。

 

「レバニラ炒め!」

 

またもザックが弱体化した一瞬を逃さずにエスケープした俺は逆水平チョップをお見舞いする。バチッという音が場内に響き、観客の歓声もますます大きくなる。

 

大阪の観客どもよ、俺に期待しろ! 新しく生まれ変わったヨシハシ様をその目に焼き付けるのだ!

モクスリー? 鷹木? タイチ? オスプ? 内藤? ジェリコ? 棚橋の復帰?

片腹痛いわ! すべてが俺の覚醒のコマにすぎん!

 

我が名はヨシハシ!

すべてを手中に納めるために降臨した、真の王である!

 

ザックの張り手が俺の頬を打ち抜く。きかぬわ! さらにムキになってエルボースマッシュを連打してくるザックの腕を取る。

くらえ。

 

「北京ダック!!!!」

 

アヒルを丸ごと焼き上げた、まさに動物虐待の最高峰とも呼べる料理の名を聞いて、完全に精神が崩壊したザックを丸め込むことなど容易いのであった。

そして、はやりヨシハシの脳の奥の奥にはこの技の記憶がしっかり残っていた。

 

 

緊箍児(きんこじ)!

 

 



⑤ ヨシハシの勝利

 

 

試合が終わった。割れんばかりの歓声が大阪城ホールを包み込んでいる。

俺の機転によって、見事ザック&鈴木みのる組を退けたのだ。

ライガーさんに褒められたし、試合後に逆ギレしてかかってきたザックも、例の呪文「カルビ丼」で弱らせて迎撃した。

さきほどまでは試合で興奮して「我こそが王だ!」なんて思っていたが、試合が終わってみると恥ずかしい気持ちになった。

俺は平穏な生活を送ってきた一般人。

いくら転生したからといって、闘いの中に身をうずめることなど性格的に不可能だ。

そういう意味では、プロレスラーの中でも温厚であまり争い事を好まないヨシハシとして生きることは、俺に合っているのかもしれない。

でもまあ最低限のパフォーマンスはしておかないとな。

俺は大きな声援に後押しされ、ザックの持つブリティッシュヘビー級ベルトへのアピールをしてみた。もちろんこれは単なるポーズであり、挑戦する気など微塵もない。

今日はたまたま勝ったが、今までの実績から、俺がタイトルマッチに挑戦することなど夢のまた夢であろう。

なんせ、石井さんや棚橋さんが挑戦したベルトである。ここまで価値が上がったタイトルに俺ごときが挑戦したら逆効果もいいとこ。

ザック、申し訳ない。今日だけ、ブリティッシュ王座に興味があるフリをさせてくれ。

 

 

いつもはパッとしないヨシハシだからこそ、こんな瞬間が貴重で喜ばしいシーンになり得るんだよな。

自分の入場曲が盛大に鳴り響く会場での強気のアピール、ファンたちの祝福の声、そしてライガーさんの満足気な表情(マスクをして見えないが)。

退場時の花道では、俺の「棒」に触りたいファンが急増! これは決して下ネタではない。

とにかくいい経験になった。プロレスラー、いやヨシハシになるのも悪くないな。

 

 

⑥ ヨシハシの苦悩

 

 

しかし現実はうまくいかないものだ。

試合後に大阪で一泊し、あまりの疲れで昼過ぎに目が覚め前日の試合を見直したら、闘っている俺の背中にテーピングの切れ端がくっついたままだったことにショックを受けた。

恥ずかしい。あんなの付けたまま「あっぽーい!」とか叫んでたのかよ俺。

 

でも試合中にザックに向けて唱えたあの禁断の呪文は、幸いにも中継マイクには拾われていなかったようで安心した。

いきなりヨシハシが試合中に「とんかつ!」とか叫んでたら、俺をディスることが生きがいのキチガイブロガーにネタにされたりしてたまったものではない。

 

ただ、問題はそのあとの事件である。

なにげなく大会の前日記者会見を見たら、予想だにしないとんでもなくマズイ事態になっていたのだ。

 

 

まさかこんなことになるとは。

 

俺のヨシハシ人生、前途多難もいいとこじゃん。

今度ばかりは、ザックも例の呪文への対策をしっかりと練ってくるだろうし(耳栓するとか、肉食になるとか)

しかもメインイベントだし、下手にしょっぱい試合をしたら俺への批判も大きくなることは間違いない。

また、新たな作戦を考えねば。

 

いや、よく考えたらひとつだけ手はある。

ホンモノのヨシハシがやり残していた、ある行動こそがヒントになるかもしれない。

2018年の神戸でやり残したアレを、俺がヨシハシとして実現すれば、あるいは。。。

 

つづく

 

 


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続きません。

 

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Comment

  1. よろしくCRドック より:

    やばい。昨夜はヨシハシのG1出場は勘弁と安易なコメントをしてしまいましたが…
    転生デヴォンヨシハシならG1出場見てみたくなってしまいました(笑)
    大阪城その③、予想外の記事内容だった~(笑)やられた~(笑)

    • devonyamaoka より:

      どうも! ヨシハシの活躍が納得できない人やザックの負けに納得できない人のために書いた「救いの記事」でしたw もう行き着くところまでいったので今後はもっと気楽にヨシハシネタを書いていこうと思いますw 長すぎる記事にお付き合いいただき誠にありがとうございました!

  2. リック より:

    PC悪化してませんか(挨拶)

    入場から安定のヨシハシ、シャツを脱ぐと「ここが弱いの!」と言わんばかりの目立つテーピング、味方のライガーさんに喝を入れられるほどの弱々しさ、しかしそれらを全て覆す幻のキンコジで勝利!…ん?最後だけヨシハシらしくないぞ?
    なるほど!中身がデヴォンさんなら納得だ!

    まず、キンコジなんてヨシハシは間違いなく忘れている。なにせ去年のG1でKUMAGOROSHIなどと言う凄まじいネーミングの技を新たに開発したくらいだ、そんな一撃必殺技があればオカダ戦や棚橋戦で出すに決まっている。
    田口監督と絡むことでヨシハシがウィキペディアの存在を知った可能性は否定できない。だが、そもそもあれはキンコジなのか?
    NJPWのアーカイブにも存在しないのでキンコジを証明することは誰にも出来ない。実際に見た人間でも証拠を提示できないからだ。(動画撮影は禁止です。)

    他人との入れ替わりが起こった時にそれがバレる要因は記憶もしくは動きだ。
    ヨシハシの中身が変わった場合、記憶に関しては特別問題がない。しかし、動きに関しては話が違う。10年以上戦っているレスラーの動きを完全再現は不可能。必然的に使う技はチョップやラリアットなど単純なものばかりになる。
    瞬間、無我夢中で繰り出した丸め込み技。デヴォンヨシハシはもちろんのことヨシハシ本人すら出したことの無い技、不意をつかれたザックは3カウントの不覚を取ってしまった。
    初めて使う技だ技名なんてない、公式サイトの試合結果に変形エビ固めという締まりの悪い書き方をされるんだろう…その時、実況席から静かな一言。

    「キンコジじゃないですか?」

    「あれがキンコジか!」「ついに出した!」「本当にあったのか!」「幻の技!キンコジ!」

    こうしてデヴォンヨシハシは無事に試合を終え、さらには幻のキンコジを成立させるに至ったのである…めでたしめでたし。

    (ヨシハシネタって思いのほか筆が進みますね)

    • devonyamaoka より:

      どうも! ヨシハシの中身が違うことの理由をとんでもない字数で説明していただきありがとうございますw ブログのコメント史上最長。まさに今回の記事のコメントに相応しい内容とクオリティです。しかも、ネタがヨシハシだからか、書くのも読むのも容易いというオマケ付き。実況席の「キンコジじゃないですか?」は俺も聞いていてゾクッとしましたw 確かに、誰も見ていない&覚えていない故にあれがキンコジだという保証はまるで無いんですよね。後付けである可能性もある。やばい。これでまた一本書けてしまいそうな悪寒。。。

  3. tanahana より:

    爆笑!!
    筒井康隆のようなSF小説様式でYOSHI-HASHIへの愛を昇華してらっしゃる!!
    すごーい!パチパチパチ
    テーピング見た瞬間、『あぁ、デヴォンさんブログになんて書くやろ。。。』と思いましたが、まさかこんな風になるとは。
    この試合で一番会場が盛り上がったのやはりライガーさんの教育的指導でした。
    蹴られた後、あっけにとられたYOSHI-HASHIがぺこっぺこっと頭をさげながら、「すみません、すみません」と言っているように見えたのですが、それも面白かった。
    『さすがライガーさんやなぁ、盛り上げ方わかってはる』と感心いたしました。
    (それまで盛り上がっていなかったから)

    SF小説は続かないようですが、DOMINIONの観戦記はまだ続きますか?
    楽しみにしています。
    とりあえず次のベルト戦、宮城・仙台でのメイン頑張ってくださいね。
    「焼肉」「チャーシュー」も有効かと思います。
    参考になれば幸いです。

    • devonyamaoka より:

      どうも! 筒井康隆が好きなのでなんか嬉しいですw テーピング見て俺がなんて書くかと考えるの、マジでこのブログに毒されてますねw ライガーさんの蹴りも、うまく転生物語のスパイスとして機能したので良かったです。「焼肉」は考えたんですが「チャーシュー」は盲点でした。もし続編を書く時があれば使わせていただきますw ドミニオンの感想はひとまず終了なので、次シリーズ開始でまた新たな気持ちで頑張ります!

  4. 吉橋ちゃん より:

    wwwwwww

    なんなんだこの記事はwwwww

    面白過ぎる!!!!

    • devonyamaoka より:

      どうも! ヨシハシへの愛が暴走して、プロレスブログとは名ばかりの二次創作記事を書き上げてしまいました。楽しんでいただけたなら本望。本当にありがとうございます!

  5. lunablanca より:

    これは『君の名は。』の続編ですか。
    まだ会った事のない君をこれから僕は探しに行く…
    君の名は…?ノブオ…?

    妄想が止まりません。責任とっていただけますか。

    • devonyamaoka より:

      どうも! 『君の名は。』の続編にしては甘酸っぱさ皆無&ロマンチック皆無な男くさいストーリーで申し訳ないw もしかしたら、ノブオ本人の魂はどこかの女子高生なんかの身体に転生しちゃっているかと思うと、無駄に妄想がふくらんでまた記事が1本書けちゃいそう。 責任とってくださいw

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