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【2.21引退記念大会】鈴木軍、飯塚高史。

2019/02/24
 
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タイチ「おい飯塚! 本当に引退すんのかどっちなんだよ! 最後くらいてめえの口からハッキリ言えコノヤロウ!」

 

しかし飯塚さんは何も言わず、観客席を徘徊しながらどこかへ消えてゆく。

その怨念坊主としての、極悪ヒールレスラーとしての最後の言葉を、雄弁なる背中で語りながら。

笑顔でゴングを手に取り、無造作に10カウントを打ち鳴らす鈴木。

リングを去っていく鈴木軍のメンバーたち。

マットにぽつんと残された、飯塚さんのアイアンフィンガー。

 

感謝の言葉もセレモニーも無し。

混乱と混沌に満ちた、ムチャクチャな引退興行。

これがヒールをまっとうした「鈴木軍、飯塚高史」のフィナーレである。

 

誰かが言った。

“飯塚高史の歴史は裏切りの歴史”だと。

今なら「それは間違っている」と言える。

飯塚さんは、裏切っていたのではなく、きっと“居場所を探していた”のだ。

 

 

以下は、10年前に飯塚さんの耳に届いた神の啓示である(妄想)。

狂え、飯塚。

裏切っても何をしてもいい。ブーイングを浴びてでも、ファンがいなくなってでもいい。

振り返らずに、狂気を見せつけろ。

そうすれば、いつか必ず“ほんとうの仲間”に出会えるだろう。

この広いプロレス界に、お前はひとりぼっちなんかじゃない。

お前を受け入れて、お前を助けてくれる“仲間”に会いに行け!

 

 

鈴木軍は飯塚さんを信じ、飯塚さんは鈴木軍を信じた。

ついに“仲間”を得た飯塚さんに迷いは無いし、もちろん裏切りも無いのである。

 

等々力渓谷の祠に「飯塚さんの心」がある?

そんな場所に、心は封印されてなどいない。

 

飯塚さんの「心」は、すでにここにあったのだ。

 

鈴木軍、飯塚高史は、ずっと心のままにプロレスをしていたんだ。

 

 

 

サブミッションマスターとして

 

いつものように、花道など歩かず、観客席から出没する飯塚さん。

いつものように、リングサイドをウロウロと歩き回る飯塚さん。

いつものように、ラフファイトを繰り返し、誰でも彼でも噛みついてくる飯塚さん。

いつものような飯塚さんがそこにいる幸せ。

 

引き締まった肉体、落ちないスピード、巧みなインサイドワーク、そして時折見せる、精度の高いサブミッションの華麗さ。

引退するプロレスラーとは思えない動きの数々に、一瞬すべてフェイクなんじゃないか? という疑いもよぎる。

こんな凄いレスラーが、本当に引退するのだろうか?

 

最後の試合は6人タッグマッチ。

これもまた一見してあっさりとしたカードであるが、よく見ると笑ってしまうほど豪華なのだ。

 

オカダ・カズチカ&天山広吉&矢野通
VS
鈴木みのる&タイチ&飯塚高史

 

超一流のパフォーマーが揃った、何が起こるのかまったく予測できない超絶エンタメ空間だ。

飯塚さんの心の封印を解くべく気持ちの入った戦いを見せる天山はもちろん、トップレスラーであるオカダが飯塚さんの介錯を請け負う可能性もある。

 

試合後半には、飯塚さんとオカダのマッチアップにおいて、とてつもない攻防が行われた。

オカダの必殺のレインメーカーをかわした飯塚さんが、カニばさみのようにくるっと足を取って膝十字を極めたシーンなど、タメ息が出るほど洗練さに満ちた入り方だった。

 

 

驚くべきことに、飯塚さんはまるで衰えてなどいないのである。

こんな攻防がいくらでもできる地力があるのに、あえてそれをやらずに、噛みついたりパイプ椅子を振り回したりしているのだ。

 

飯塚さんの姿を見て誰もが言う言葉がある。

 

プロフェッショナル

 

それは、ヒールを貫く姿勢だけを差して言っているのではない。

やろうと思えば鮮やかにサブミッションを仕掛けることができるほど、しっかりと技も肉体も磨き上げている真剣さ。

10年間使用していない関節技を、あれほどあっさりと最後の試合に出せるわけがないし、おそらくずっと、この使うべき時が来るかわからない技を磨き続けていたのだ。

 

2017年のタッグリーグのシリーズ中、バックステージで鈴木が言った言葉を思い出す。

「誰に関節技をかけて倒そうと思ってんだ? え? お前らの目の前にいるのはサブミッションマスターの飯塚高史だぞ!」

 

唐突に、鈴木が飯塚さんのことを「サブミッションマスター」と口走ったので、俺なんかは「なぜ急に?」と驚いたわけだが、その謎が解けた。

鈴木は、毎日のように飯塚さんのトレーニングを見ていたのではないだろうか。

怨念坊主をやりながらも、陰で必死にサブミッションのスキルを磨いている飯塚さんを知っているからこそ出て来た言葉だとしたら、すべてに辻褄が合うではないか。

 



飯塚さんの美しき最後

 

その特異な存在ゆえに、飯塚さんの引退の仕方についてはファンの間で様々な予想が飛び交った。

果たして心は戻るのか?

どんなコメントや挨拶を残すのか?

ヒールのまま暴れて引退するのか?

鈴木軍を裏切るのか?

 

何が起きても不思議ではないが、引退までの数日間でそれを予測するのもまた楽しいひとときであった。

そんなファンの期待や興奮を知ってか知らずか、飯塚さんはラストまで頑なに怨念坊主でありつづけ、戻りそうな雰囲気になったと思ったらやっぱり戻らない、というギリギリのラインで上手く立ち回っていた。

そのへんのバランス感が絶妙だなとマジで感心してしまう。

 

大阪大会では、鈴木が天山に振り下ろそうとしたパイプ椅子を、飯塚さんが割って入ってそれを受け止めるという思わせぶりなシーンがあった。

最後の引退試合でも、天山が泣きながら放ったムーンサルトで敗北し、友情Tシャツを差し出されたときの飯塚さんは、一瞬しっかりと良心を取り戻したかのように天山と握手をした。

 

え! 戻ったの?

 

と思わせて、次の瞬間には天山のアタマに噛みついている飯塚さん。

ファンの気持ちをどれだけ揺さぶるんだよ飯塚さん!

確信犯すぎて大爆笑してしまった。と同時に安堵もしてしまったが。

 

このくだりの絶妙さ、みなさん気付いていたと思うけど、まず飯塚さんが心を取り戻しそうにアタマを抱える場面では、リング上にケイオス勢がいて、観客のコールを煽っている。

で、周囲に鈴木もタイチもいなくなってしまうので、飯塚さんの良心が戻りそうな雰囲気が一気に加速する。

しかし、飯塚さんが一変して天山に噛みついた瞬間に、鈴木軍がどこからともなく集まってきてリング上が一気に混沌と化す。

 

戻るわけねーだろうが!

 

と、飯塚さんの復活を願っていたファンを大いに突き放すのだ。

そのときの俺と息子は、まさに「笑顔と涙」でぐしゃぐしゃな状況。

 

これほど完璧にファンをバカにしたフィナーレを演出する鈴木軍のブレない世界観。

 

いつかデスペが言った言葉を思い出す。

「いつもいつも、自分たちのハッピーエンドになると思うなよ」

 

飯塚さんが心を取り戻し、最後にマイクでファンに感謝をし、昔の姿でリングを去る。

それもまた素晴らしくドラマチックな幕引きかもしれない。

しかし、鈴木軍の飯塚さんにとっての、最高に美しいフィナーレはまさにこれなのだ。

 

俺はことあるごとにこのブログで、鈴木軍の美しさを論じてきた。

鈴木軍を形成するのは「悪」などではない。

「意思」と「覚悟」である。

 

走り続ける意思、やり遂げる覚悟。

 

それを踏まえて考えれば、飯塚さんがどんな引退をするかなんて予想するまでもないことであった。

小細工も何も無し。

飯塚さんはもっとも完璧なカタチで、鈴木軍としての存在をまっとうしたのだ。

 

 

 

誰がために鐘は鳴る

 

天山
「おい飯塚、辞める前に俺とまたもう一回、真面目な飯塚に戻って友情タッグ、復活させようやないか!」

 

飯塚さんの引退を控え、ヒールへの道を突き進むきっかけとなった裏切りの犠牲者、天山がその最後の物語を動かした。

目指すは天山との友情タッグの復活。

 

飯塚さんを元に戻すために、プレミアの友情タッグTシャツを手に入れて情にうったえる天山、「良心」が封印されている等々力渓谷の祠に実際に足を運び逆に呪われる天山、飯塚さんを戻そうとするあまりtwitterの発信センスが向上しちゃう天山

 

飯塚さん引退のラストを盛大に盛り上げるべく天山はその役割を担い、もうひとりの主役として注目を浴びてきた。

 

 

天山の努力あってこそ、飯塚さんの完璧な最後のお膳立てができたと言っていいだろう。

天山は良識あるファンの代弁者であった。

 

そして飯塚さんは、そんな天山の努力をすべて台無しにすることで、自らの選んだ道が「正しい道」であったことを証明し、世間に知らしめたのだ。

 

 

人はいつ死ぬと思う?

心臓を銃で撃ち抜かれた時? 違う。

不治の病に侵された時? 違う。

人に、忘れられた時だ。

 

 

この日の飯塚さんを忘れる者などいるだろうか?

答えはNOである。

飯塚さんはいなくなっても、この壮絶な最後はファンの記憶に残り続け、語り継がれるだろう。

鈴木軍がその「意思」を引き継ぐ。

その「存在」は、俺たちプロレスファンが必ず語り継ぐ。

 

 

 



友情タッグは常に目の前にあった

 

伝説となった天山との友情タッグ。

しかし、天山の友情も“本当の友情”には敵わなかったというのが結論であった。

 

鈴木みのると飯塚さんとの、誰もが見慣れたタッグこそが、プロレス史上最高の友情タッグだったのだ。

 

鈴木とのタッグは、ワールドタッグリーグにおいて何ひとつロートル感を感じさせず、強力なチーム相手にパワーでもスピードでも完璧に対応してしまうとんでもないチームだった。

そして、2018年ワールドタッグリーグでの鈴木軍同士の対決で、この2人のタッグの素晴らしさが浮き彫りになった。

サブミッションが得意なザックに対しての鮮烈な胴締めスリーパーを見せたあの日、飯塚さんも鈴木も、誰がどう見ても楽しそうに戦っていた

飯塚さんは鈴木と最前線で戦えることを心底楽しんでいたに違いない。

思い返すと、飯塚さんは鈴木とタッグで戦っているときがもっとも輝いていたのだ。

 

飯塚さんの「心」は、鈴木と共に、鈴木軍と共に「ここ」にあった。

 

もしかしたらアイアンフィンガーの入ってるポシェットの中にあったのかもよ、「心」。

最後、天山にトドメを刺した伝家の宝刀アイアンフィンガー・フロム・ヘルのカタルシス。

もの言わぬ飯塚さんの心がこう叫んでいた(ような気がした)

 

 

まったく、いいプロレス人生だった!!!

 

 

 

 

まとめ(仲間たち)

 

 

 

 

 

 

 

飯塚さん、またどこかで!

 

 


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Comment

  1. えびお より:

    行ってきました。村人の感謝の声を背に、なにか仙人が別れの言葉も告げずあっさりと雲で去っていったみたいな最後でしたね。これで新日のリングで見るのは最後なんだなと思いながら観てしまったので、油断すると涙目になってしまって大変でした。

    飯塚さんグッズはすべて完売してました。花輪もいろいろ出てましたよ。真輔、ももいろクローバーz、葛西純…。飯塚さんの室蘭の同級生のかたたちからも出てました。
    引退試合のためにポスターが2種類作られていたんですが、一枚が関わった選手たちをバックに、飯塚さんがアイアンフィンガーの右手を挙げた格好で去っていく後姿というやつで、ホントにいいポスターでした。ほしかった…。

    • devonyamaoka より:

      どうも! 飯塚さんの引退を現地で見られたんですね! 素晴らしい! 羨ましい! 最高の体験ですね!
      グッズ完売、多くの花輪、そしてあのファンの一体感、飯塚さんがいかに愛されていたかがわかりますね。俺もワールドで試合観て泣いて、このブログを書きながら泣いて、改めて見返してまた泣いて、といつまでたっても飯塚さんの余韻に浸っていたい状態です。

  2. ふうさん より:

    どうも!
    現場行きたかったけど、インフルでそれも叶わずワールドで観戦してました。
    一緒に飯塚コールしたかった…
    鈴木軍らしい数々の演出に泣けてきて最後はまともに見れないくらいに(笑)
    歳のせいか涙腺緩んできたのかな?

    最近の鈴木軍のかませ犬的な感じと飯塚さん引退で一気に観る気失せてきました。
    昨日も全敗。しかもディスプレイなんぞにスミスがピン取られるという演出でもあってはならない結果。
    永らく親日見てきたけどしばらく観戦するの休業します。
    山岡さん、以降も頑張ってブログ続けてください。
    いつまでも応援してます。
    いつかまた
    鈴木軍、いちばーん!

    • devonyamaoka より:

      どうも! インフルでダウンとは悲しいですね。でもワールドでも十分あの感動は伝わってきましたよね。俺も泣きました。最近の鈴木軍の待遇の悪さは俺も感じますが、飯塚さんの引退があれほど素晴らしいものだったので、まだまだ希望を持っていいと思いますよ。
      たしかにディスプレイに獲られたのはここ最近でもっとも屈辱でしたが。
      ふうさん! 俺と一緒にもう少し鈴木軍を応援しましょうよ! ボスがベルト獲るまで、俺たちファンが諦めたら頑張っている鈴木軍のみなさんに申し訳ないっす。とりあえず少し休むのもいいかもしれませんが。いつか近いうちに、また戻ってきてください! 俺はこのブログでずっと待ってます!
      鈴木軍、いちばーん!

  3. リック より:

    退場しても鳴り止まない飯塚コールに観客の愛が詰まっていましたね。
    鈴木みのるのインスタが素晴らし過ぎて…いつもの飯塚さんと泣いてるような笑っているような鈴木の顔がなんとも…

    怨念坊主としての全盛期で引退した飯塚さん、もしかしたら乱入だけの登場とかあったら良いなと期待もしてしまいます。
    色々語りたくなりますが、デスペ金丸のコメントが全てですね。

    飯塚さん!良いものを見させてもらいました!
    お疲れ様でした!

    • devonyamaoka より:

      どうも! ほんと、あの鳴りやまない手拍子と飯塚さんコールは凄かった。鈴木みのると飯塚さんの絆がしっかり確認できるラストでした。俺の中では今世紀最高の感動作でしたよ。レスラーは引退しましたが、まだまだ怨念坊主の飯塚さんにはやるべき仕事があるのかもしれないですね。ほんと良いモノを見た!

  4. いち飯塚さんファン より:

    記事ありがとうございます。引退記念試合、それぞれの飯塚さんに対する想いが、伝わってきて涙腺崩壊しまくりでした。ヒールを貫き無言のまま引退する飯塚さんこそ、真のプロフェッショナルです。問題は、想像以上に飯塚さんロスが激しくてとにかく虚無感に包まれてしまっていることです。でも、このまま、プロレスを見れなくなってしまうことこそ、飯塚さんの想いに反することだと思うので、NewJapanCupまでには、飯塚さんロスから立ち直れる様に頑張ります。

    • devonyamaoka より:

      どうも! こちらこそいつも読んでいただきありがとうございます! そうですね。天山、鈴木、オカダ、矢野、そして鈴木軍のメンバー、野上アナ、ファンのみなさん、いろんな視点の飯塚さんへの愛があって、それが全部あったかくて、俺も今まで5回観て5回泣いていますw 
      その虚無感わかりますw その証拠にROH興行まったく見てませんから。当分この余韻に浸って、来週くらいから見始めようかなと。ニュージャパンカップのトーナメントも発表されたし、そろそろ立ち直らねばですね。

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