【雪の札幌大会その③】飯塚さんの世界【THE NEW BEGINNING in SAPPORO】

すっかり確定申告のシーズンになり、毎年この時期は経費の精算のことで頭を悩ませている個人事業主のみなさんも、今すぐ溜め込んだレシートをすべて燃やして申告を断念してまで観なきゃならない歴史的興行『THE NEW BEGINNING in SAPPORO ~雪の札幌2連戦~』を現地観戦した。
この大会を、わざわざ会場まで足を運んで観戦しなければいけなかった理由は2つある。
1つめの理由は、新日本プロレスが一年間に行う札幌でのビッグマッチが、この真冬の札幌決戦2連戦とG1クライマックスの計3日間のみであり、北海道に住むプロレスファンにとっての貴重な生観戦のチャンスだから。
もう1つの理由は、引退直前の我らがヒーロー飯塚高史選手の勇姿を生で観ることができる最後の大会だったからである。
プロレス観戦のたびに、会場で席に着くなり息子は必ずこう言う。
「今日は飯塚どこから来るかな、こっちに来たら怖いな」
飯塚さんの神出鬼没な登場と、獲物を探し求めるかのような危険な徘徊は、着実にキッズたちに恐怖を植え付けている。
リング上での闘いを観戦するだけでなく、こうしてリング外のスリリングな体験までも演出してくれるのがプロレス観戦の醍醐味であり、「怨念坊主」飯塚さんはまさにそれをシンプルに体現してくれていた存在であった。
試合がアナウンスされる。
入場曲が流れる。
当然花道に飯塚さんはいない。
どこだ? どこだ? 緊張と期待の入り混じった面持ちで周囲を見渡す観客。
「お気を付けください! 飯塚選手の周りは大変危険です! お気をつけください!」
観客席を徘徊する飯塚さんにスポットライトが当たる。
あんなところにッ!
この一連の完璧なるエンタメ空間。
息子はほっと胸をなでおろす。
「こっちに来なくて良かった・・・」
2.21に飯塚さんはプロレスを、鈴木軍を、そして理性を持たない怨念坊主という役割を引退する。
飯塚さんという存在の恐怖と緊張感を、息子はギリギリ経験として残すことができたので本当に良かったと思う。
もし息子がいつか親となり、子どもと一緒にプロレスを見るようなことになったら、きっとこの記憶を伝えるだろう。
「昔、お父さんが子どもの頃、すごく怖いレスラーがいてね、観客席に突然現れて暴れながら入場してくるんだ。2階席にいても油断できなかったんだよ」
「ええ! そんな怖い人がいたんだ! 今はいなくて本当に良かった・・・」
飯塚さんの伝説は、こうして語り継がれていくはずだ。
飯塚さんの最後の物語が始まる
この日、引退を間近に控えた飯塚さんと試合を組まれた相手は、かつての「友情タッグ」のパートナー天山広吉であった。
天山「おい飯塚、よく聞けよおい! 今度おまえ引退するらしいやないか! 辞める前に俺とまたもう一回、真面目な飯塚に戻って友情タッグ、復活させようやないか!」
そんな天山の言葉に、飯塚さんは当然耳など貸すわけがない。
「ウガーッ」とか言いながらいつものラフファイトで天山を痛めつけ、伝家の宝刀アイアンフィンガー・フロム・ヘルでトドメを刺すのであった(反則)
天山も天山で「真面目な飯塚に戻れ」とか言ってるけど、今の飯塚さんは真面目とか不真面目とかそんな次元じゃない気もするが。
息子「なんで天山の試合のとき、みんなでシューシュー言うの?」
俺「天山はシューシューという音を聞くと、身体が勝手にモンゴリアンチョップをしてしまう仕様なんだよ」
とにかく、飯塚さんの最後のストーリーは、怨念坊主としてのきっかけともなった裏切りの被害者である天山と共に紡がれることとなった。
ラスト2試合、大阪大会と引退興行で、天山は全身全霊をかけて飯塚さんを改心させるはず。
悪の怨念を、10年越しに浄化する友情パワー。
まさにキン肉マンとの闘いの中で友情に目覚めた悪魔超人バッファローマンよろしく、飯塚さんは天山との闘いの中でその心を取り戻していくのかもしれない。
鈴木軍の制御不能な怨念坊主のままで現役を終えるのもまた飯塚さんらしいが、やはり天山が出て来たからには人間の姿で、在りし日の飯塚さん、陰の実力者と言われたサブミッションマスター飯塚さんとしてリングを降りてもらいたい気持ちも大きい。
残りたった2回の試合だが、そこに過去10年分のドラマが凝縮された2人の闘いが展開されるだろう。
首を締めるための凶器ではなく、しっかりと別れの言葉を伝えるために、飯塚さんがマイクを使ってくれることを願おうではないか。
地元ビッグマッチで与えられた大きな役割
2.3札幌大会メインイベント
内藤哲也 VS タイチのインターコンチ王座戦にて、地元北海道での最後の飯塚さんの大仕事が待っていた。
入場してくる内藤を背後から脚立で殴打。
ド派手にKOして、ロスインゴファンだらけの会場を騒然とさせたのである。
最後の凱旋試合でこれほどの重要な任務を任されてしまうところに、飯塚さんへの絶大な信頼が見て取れるではないか。
結局、鈴木軍はプロフェッショナルの集まりなのだ。
誰もがその役割を確実にまっとうする能力を持っている。
そう考えると、飯塚さんがその最後の現役時代を、ずっと鈴木軍としてやり遂げたことに納得ができる。
飯塚さんの持つ本来のまっすぐさや真剣さが、鈴木軍の綿密で巧妙な作戦内容にドンピシャで合っていたのだ。
北海道石狩市出身であるタイチの王座戦に、北海道室蘭市出身の飯塚さんが傍若無人なテロ行為で華を添える。
まさに雪の札幌決戦にふさわしい豪華絢爛な仕掛けであった。
飯塚さんをめぐるみなさんのコメント
タイチ
「今の飯塚は自分が北海道出身なんて認識できてないけどよ」
タイチは昨年ワールドタッグリーグ2018での鈴木軍対決の際も、飯塚さんを言葉巧みに洗脳して、自分ではなく相手の鈴木のほうを襲わせようとするなどしていたので、完全に飯塚さんを知能の低い動物扱いである。
ミラノさん
「飯塚さんをこのまま社会に放り出してしまうと、世の中が大変なことになってしまう可能性がありますから。なんとかそれを更生させなきゃいけないですよね」
ミラノさんは、飯塚さんの引退後の社会生活を気にしている模様(優しい)
山崎さん
「引退する理由は何だろうと思いますね。コンディションが悪いわけでもない、この身体の張りもある。引退して何かやりたい事が見つかったんですかねえ」
かつての飯塚さんをよく知っているからか、山崎さんはもう「会社を退職する部下を心配する上司」みたいなコメントをしている。
ミラノさん
「天山さんが飯塚選手をもし真面目に戻すことができたらインタビューが可能になるじゃないですか。半生を語って欲しいですよね」
ミラノさん、飯塚さんのプロレス人生に興味津々(半分面白がっているように見えるが)
引退後の飯塚さんが自伝本でも出せば、間違いなく村上春樹の新刊くらい売れそうである。
まとめ
引退を控えた飯塚さんの物語は、残り2戦で急展開を見せる可能性が大。
もしかしたら、2.11大阪大会でもっとも注目すべきは、IWGP王座戦でも、ヨシハシの裏切りでもなく、飯塚さんに人間の心が戻ってくる瞬間かもしれない。
こいつは目が離せんぞ!
Comment
あのマイク持った瞬間は見てるこっちもまさか!?と思って興奮しましたね。フリとオチが完璧すぎました。
山崎さんじゃないですが、ウガウガしか言えないのにどうやって引退表明したのかは気になってるので、個人的には最後に人間の心を取り戻して引退理由をしゃべってほしいです。
ただもう言葉には耳を貸さないみたいなので、引退試合ではあらかじめ別撮りした天山が等々力渓谷の祠を壊しに行く映像を流してもらいたい。
どうも! いきなりマイク持った瞬間の会場のざわめきがヤバかったですw でもそのあとのタメ息も大きかったw 山崎さんは本気で心配していて解説が面白かったですねw 天山の等々力渓谷ロケ見たいwww
私も、あのマイクを持った瞬間。おおっ!ってなりました。そして、その後のミラノさんの「これは、これで素晴らしい」発言に頷いてしまいました。残す所後2戦!この日が楽しみてでいて、かつ永遠に来ないてでで欲しいという葛藤と戦っております。飯塚さんの最後の入場曲は、TerribleAirに期待して、大阪大会を、待ちたいと思います。失礼しました。
どうも! そう、下手に観客に媚びを売らないのが飯塚さん。マイクは首を絞めるためにしか使わないという、強い意志の表れでしたねw 終わりが来ないで欲しい気持ちわかります。残り2試合、歴史に残る最後になることはすでに保証されてますので、心を静めてしっかりと見届けましょう。
札幌大会の記事、豪華3本立!!もう笑いすぎて、息子が「お父さんどうした~」と慌てて花道ダッシュばりに駆けつけに来ましたよ。その2の記事「地味な裏切り行為」は超絶笑いました。
飯塚さんの終焉にはどんなドラマをが用意されてるか楽しみですね。
どうも! 3本立てすべて読んでいただきありがとうございます! 札幌大会は盛りだくさんで、もっと書きたい事もあったんですが、気を抜くと1万字を超えてしまうのでいつも記事を短くするのが大変w 飯塚さんの最後は確実に凄いことになりそうです。大阪では、飯塚さんとヨシハシとタイチ、この3人が何かをしでかす可能性大ですよ!