【雪の札幌大会その①】鈴木軍の世界【THE NEW BEGINNING in SAPPORO】

3度の飯よりも鈴木軍が好きで、昨年2018年のワールドタッグリーグ公式戦の鈴木軍対決をオカズにご飯何杯でもいけちゃう! という生粋の鈴木軍ファンでも、思わず大会フィナーレでロスインゴファンと共にやけくその「デ! ハ! ポン!」コールを全力でやっちゃうほどの歴史的興行『THE NEW BEGINNING in SAPPORO ~雪の札幌2連戦~』を現地で観戦した。
札幌での久々のビッグマッチということもあり、わしら田舎もんにとっては一生あるかないかの貴重な生観戦のチャンスを逃してなるものかと、家族総出で会場へ(昨年も行ったけど)
しかしながら、鈴木軍VSロスインゴの全面対抗戦の様相を見せた3大タイトルマッチは、まさかの鈴木軍全敗という死んでも死にきれないショッキングな結果で幕を下ろし、俺も息子も傷心のあまり明日から無気力の勃起障害(ED)になりそうな勢いで落ち込んだのであった。
絶望に打ちひしがれながらも、大会のメインを勝利で飾った憎き内藤のマイクを聞きながら、息子と2人で顔を見合わせて、
俺「もうヤケだからデハポンコールやろうか」
息子「そうだね。思いっきりやろう」
などと、敗戦を悟った大日本帝国陸軍の隊員さながらの「どうせ死ぬなら悔いなく共に散ろう」的な潔い親子の会話を交わしての大コール。
試合結果への不満とか、負けた悔しさとか、周辺から聞こえるクソみたいなヤジとか、たまった仕事の原稿とか、収入の少なさとか、バナナ買ってたの忘れてて気づいたら熟しすぎて真っ黒になってたこととか、あらゆるうっぷんを増幅させ凝縮した、アックマンの「アクマイト光線」もびっくりの呪いの元気玉よろしくデ! ハ! ポン! 発動。
すると不思議なことに、その大声と共に「負けた絶望」がスッキリと無くなり、気持ちは「まあ面白かったからいいか!」といった晴れやかな気分に早変わりしていたのだった。
試合に負けた。
野望はついえた。
望みは絶たれた。
何もかも失敗だった。
だが、俺たち鈴木軍ファンにとって、そんな状況は今までいくらでもあった。
結局俺たちは、諦めが悪いファンなんだ。
タイチは、会場の6000人近い観客を敵にまわして、堂々と悪を貫いた。
鈴木みのるは、負けてフラフラになりながらもヤングライオンをブチのめしてリングを後にした。
デスペラードはマスク無しの姿でバックステージに立ちこう言った。
「ただ1回、負けただけだ。ただ1回で終わると思うなよ。ボスも言ってただろ? 俺たち鈴木軍はしつこいぜ」
すべての試合で、極上のパフォーマンスを魅せた鈴木軍とロスインゴの3大タイトルマッチ。
いっさいのベルトの移動は無かったが、鈴木軍の「悪」の美しさは一層際立ち、ますますその魅力に引き込まれた。
「勝った負けた。そんな小さいことでプロレスをしていない」
奇しくもこれは内藤哲也が放った言葉だが、俺たちファンも同様である。
勝った負けた。そんな小さいことでプロレスファンやってねえ。
特に俺たち鈴木軍ファンはな(ずっと負け続けてるし)
雪の札幌で起きた悪夢のような大事件
タイチ「冬の札幌、いつだったかの藤原喜明以来、何も起きてねえな。これといったものは。何年ぶりだ? 調べたのか? 何年ぶりにあれ以上のことを起こすかもな。楽しみにしとけよ」
内藤「冬の札幌は何かが起こるんだろ? 要するにタイチ選手が何かを起こすんでしょ? いったい何が起こるのかなあ、楽しみだなあ、でもどうせ何も起こらないでしょう。期待させるだけさせておいて、何も起きないよ」
起きたのである。
しかもとびっきりなやつが。
入場時の内藤哲也を、飯塚さんが脚立でぶん殴るという暴挙をかまして内藤はダウン。
起き上がれない内藤の元へと近づいたニヤニヤのタイチは、ダメ押しに花道でのブラックメフィストを食らわせるというド派手なテロ行為を行ったのである。
それどころか、内藤はピクリともしないまま時間は流れ、危ないときにやってくることでお馴染みの三澤トレーナーに診断されてもなお起き上がれないことから、ヤングライオンに担がれて一時退場するというトラブルにまで発展したのであった。
当然のように会場は騒然とし、ロスインゴファンの暴動にもなりかねないドス黒いヤジが飛び交う。
なんせ、今回の札幌大会は、会場の観客の大部分がロスインゴファンである。
鈴木軍ファンは完全にアウェー状態。
前も後ろもロスインゴ、右も左もロスインゴ、石を投げたらロスインゴに当たる、犬も歩けばロスインゴ、百聞もロスインゴにしかず、仏の顔もロスインゴまで、といった、まさにロスインゴフェスティバルと化した会場で、タイチはノーコンテストにもなり得るあり得ない離れ業をやってのけたのである。
もちろん、タイチを応援している我々にとっても、このアクシデントは不安と戦慄の時間であった。
横の息子は「大変だ、どうしよう・・・大丈夫かな」などと心配そうに聞いてくるが、俺も大人として冷静を装って「大丈夫さ」なんて言えるわけねー。
息子よ、父もお前と同じ不安でドキドキしとるのだ。
とにかく大事件は公約通りに起きた。
「こんなの大事件じゃない」という人もいるかもしれないが、大会が十数分間も止まるくらいだから、来場していたファンにとってはそれはそれは悪夢のような経験であった。
結果的に、内藤はフラフラになりながらもリングに立ち、ダメージの残る中でタイチのデンジャラスな攻撃をすべて受けきって見事大逆転の勝利を挙げる。
悶々としてフラストレーションの溜まっていたロスインゴファンは大爆発し、内藤の奇跡の勝利に酔いしれる感動のフィナーレとなったのだ(息子は悔しさで涙目)
タイチにとってのインターコンチ王座戦、いやインターコンチ十字陵は、花道での内藤襲撃という悪の罠によって完成を迎えるはずであったが、時代がそれを許さなかったということだろう。
「悪」とは何か?
「正々堂々と戦えば勝てる実力があるのに」「鈴木軍を抜ければもっと伸びそう」といったことも言われるタイチ。
しかし、ファンにここまで期待されて、地元メインというおあつらえの大舞台を用意されておきながら、「正々堂々とやらない」ことを選ぶタイチに、ヒールとしてのブレない信念を感じて目頭が熱くなる。
「鈴木軍を抜ければ」とか、軽々しく言えるようなことではない。
鈴木軍がどれほど凄いヒール集団か、タイチもその他のメンバーたちも、このユニットの価値を誰よりもわかっているんだから。
この日、無残に敗れた鈴木軍の、これまでの悪行の数々を思い出して欲しい。
1.5ニューイヤーダッシュで大暴れして、ロスインゴファン全員に対して悪態をついて、ロスインゴの選手たちを辛辣にディスり続け、前哨戦でも散々痛めつけた。
まさに悪の限りを尽くして、最後に「正義が勝つ」シチュエーションを見事に演出した。
「善」を輝かせるのは完全なる「悪」である。
そしてそれは「悪」ゆえに、安定した隆盛などあり得ない。
必ず民衆の支持を得た正義の使者に、その野望もろとも成敗されてしまうものなのだ。
鈴木軍は、正義の鉄拳の前に打ちのめされ、人々に憎まれ煙たがられ、その企みを何度も失敗しながらも、決して叶うことのない「完全侵略」と言う名の覇権を目指して、ただひたすら傍若無人な悪を突き進む。
彼らが欲しいのは栄光や声援などではない。
栄光が欲しければ、最初から「鈴木軍」などに入らないであろう。
俺たちが鈴木軍を応援することの醍醐味はまさにそこなのだ。
自らのポリシー、スタイル、覚悟を貫き、陽の当たる道ではなく、正義の光を際立たせるための存在であり続けながらも、時折見せる「悪」としての儚い輝きを楽しむこと。
鈴木軍の美しさは、その儚さにあるのだ。
ミラノさん
「こういう生き方を選んでしまったんです。声援を自ら捨てましたからね彼は。だからタイチはこれで終わらないですよ。またこいつは戻ってきますよ」
鈴木みのるの逆襲はここからはじまる
EVIL&SANADA組とのタッグ王座戦は、なんと鈴木が派手に仕留められるという屈辱で敗退。
まさか負けるとしてもザックが取られると思っていたので非常にショックだった。
しかし、前日の札幌大会1日目のスペシャルシングルマッチで、鈴木は壮絶な戦いの末にサナダを破っているのである。
そのときの興奮を表現するなら息子の言葉がいちばん分かりやすいだろう。
息子「鈴木がドロップキックしたとき、俺マジで全裸になろうかと思った!」
いかがだろうか。
いや「いかが」もクソもねーよ。なんて言わないで。
小学年6年生の多感な時期の男の子が、あろうことか札幌北海きたえーるのアリーナ席で全裸になりそうなくらい興奮するってすごくない?
人はあまりにも感動して興奮すると、理性とか道徳とかが消え去ってしまうのかもしれない。
プロ野球の阪神ファンが、さんざん禁止されているのにも関わらず道頓堀に飛び込んでしまう気持ちが分かった気がした。
とにかく何が言いたいのかというと、タッグでは負けた。が、シングルでは勝ったということである。
「鈴木軍」は全敗したと言ったが、このシングルで鈴木が一勝しているという部分が、鈴木軍ファンにとっての唯一の救いなのだ。
もちろんザックと組んでのタッグ王座戦も見ごたえのある壮絶な試合であった。
多彩な関節技での攻撃の精度の高さに、ロスインゴタッグも大いに苦戦したであろう。
しかし、タッグとしてのダイナミズムで言えば、やはりタッグリーグ優勝チームであるEVIL&SANADAは文句なしに素晴らしかった。
王座を戴冠した後もなお進化し続けるタッグチームであることを、まざまざと見せつけられた感じだ。
鈴木とザックの最強タッグを退けたのは大きい。
ぜひとも公約通り、次の東京ドームまでベルトを死守して価値をさらに上げて欲しいところだ。
ジュニアタッグと言う名の最強エンターテインメント
「相手+パートナー+客、すべてを頭に入れて動くのがタッグ戦」
新日本プロレスの公式スマホサイトでの鈴木軍対談で、金丸が自らのタッグ観をこう語った。
すべてを頭に入れて動いているからこそ、あれほどまでに華麗で綿密なインサイドワークが可能だったのか。
金丸の類まれなるセンスはもちろん、デスペラードの臨機応変な対応力と優れた身体能力もまたそこにプラスされ、鈴木軍ジュニアタッグの完璧なタッグワークが生まれているのだ。
ワールド中継で観戦していると、いつもカメラが捉えていない金丸の動向が気になっていた。
思わずコスプレ社長に「金丸の動向を追うためだけのカメラ」、通称:カネマルカメラを会場に常備してもらい、中継のワイプでそっちも一緒に見せろコノヤロウ! と腰を低くお願いしてしまったほどである。
しかし今日は必要ない。
なぜなら俺は現地におり、リング全体が見渡せる席から金丸の動向の一部始終をしっかりと見ることができるからだ。
この日の金丸はインサイドワークはもちろん、リング上での攻防も神がかっていたなあ。
特に鷹木とのマッチアップで、その引き出しの多さ&動きの速さ&技の巧さが際立っていて、見ていてタメ息が出るほど興奮した。
もちろんロスインゴも見事な連携で文句なしの勝利を収めた。
あんなオシャレ覆面男に負けるのは悔しいが、俺もつい浮かれて娘に黒のマニキュアを塗ってもらってBUSHIのtwitter写真を真似るなどのクダラナイ遊びをして、鈴木軍ファンの風上にも置けない行為をしてしまった。
あれから、自分の指先を見るたびにちょっとウットリしている。
BUSHIの気持ちがちょっとわかった。
まとめ
鈴木軍とロスインゴの闘いはこれで終わるのか?
はたまた遺恨を残したまま、今年中にまたどこかで抗争が再発するのか?
どちらにせよ、今回は完全に負けである。
こうなったら、内藤はIC王座とIWGP王座の2冠宣言を達成して欲しいし、ほかのタッグチームもベルトの価値をどんどん上げて欲しい。
間違ってもどこの馬の骨ともわからん奴らには奪われないでくれ。
鈴木軍ファンとして、ロスインゴの今後の活躍を祈ろう。
そして、ちょうどこの日は節分だったので、大会終了後に恵方巻を食った。
鈴木みのるのIWGP戴冠を願って。
以上。
Comment
たった一年で内藤の敵にまでのし上がり
同郷の観客からレッツゴータイチではなく心の底からのタイチは帰れ!を浴びながら
卑怯な手を使いみっともなく内藤にすがりつきさえもした
タイチは悪の本懐を遂げたんだなあ
飯塚さんも
どうも! まさに本懐を遂げたタイチの美しき凱旋でしたね。飯塚さんもやり遂げました。ウワサでは賛否両論だったようで、俺の周りでは楽しんでいる人ばかりだったので意外でしたが。しかし賛否がある試合を堂々と仕掛けるのもまた大きな成長ですよねー。
室蘭出身飯塚最後の凱旋試合
メインイベントで乱入
そしてリングから見守る石狩出身タイチ
この図だけで泣けてくる
中断時のマイクの繋ぎ煽りもよかった
試合内容も文句なし
普通にやれば強いのにとか茶番とか
そこじゃないんだよなぁ
あの瞬間飯塚だけにスポットライトが当たってる
それがあの大会の全てだと思ってる
どうも! まさに北海道出身の2人に与えられた大いなる仕事って感じで感慨深いものがありました。あの状況でリング上にて観客を煽り続けたタイチとあべみほの凄さは一生忘れてはいけないと思います。飯塚さんも、最後に有終の美を飾ったなと。まさに大会のすべてがそこにありましたね。
メインに関しては試合自体は面白かったのに、なぜあんなことになったのか…
あれだけやって負けちゃうタイチはもちろん、勝った内藤の株も下がっちゃった気がします。各方面で賛否両論ですし、これ以上何も言いません。
タッグは前日のシングル2戦で1勝1敗だからどっちが勝つか分かりませんでしたが、EVILが去年から散々やられ続けてきたザックにリベンジしたということで勢いを感じましたね。その勢いでSANADAを引っ張ったと思います。投げ技の共演とかマジックキラーのタイミングの絶妙さとかも良かったし、新日を代表するタッグチームになりましたね。あとはオリジナルの合体技も作ってくれると嬉しいのですが…
ジュニアタッグはこの日のベストバウトでしたね。4人がそれぞれの魅力を余すところなく発揮しましたが、特に金丸ですよ!すでに各方面で大絶賛されてますが、間違いなくあの試合の…いやあの日のMVPと言って差し支えないと思います。
旋回式DDTからのムーンサルトプレスの流れるような攻撃、熨斗紙直立受け、パンピングボンバーきりもみ受け、そしてリベリオンぼよよん受け…すごすぎて言葉を失いました。あとウイスキーミストと椅子でガードされたときの顔が最高でしたね。金丸は前日のコメントで鷹木&BUSHIのチャンピオンらしいところを引き出すと言っていてまさしく有言実行、自分感動しました。以前から自分はデスペにシングル王座に絡んでほしいと言っていましたが、金丸にもその資格が十分あると感じましたね。
この試合でジュニアタッグのベルトの価値も上がったんじゃないでしょうか。3K以外にも挑戦者がいればいいんですが…
それから何気にBUSHIも新日入団後のベストバウトだったんじゃないかと言うほど大活躍で驚きました。デスペが上手く受けてくれたのもあると思いますが、常時これぐらいできればシングル戦線にも絡めるんじゃないですか。おしゃれ感満載のスカしたキャラより無様でも感情見えるほうがカッコいいですよ。BUSHIが感情出せる相手ってKUSHIDAぐらいでしたけど、KUSHIDAはもういないしデスペともそういう関係になるといいですよね。デスペもライバルのヒロムが不在ですし。
金丸デスペによるタケシ発言が出て以降自分もタケシタケシと散々馬鹿にしてきましたが、これからはちゃんとBUSHIと呼んであげようと思います。
どうも! デルピッポさんも楽しんだみたいですねw まさにベストバウトはジュニアタッグでしたね。あれほど見ごたえがあって、全選手の凄さが伝わって、試合結果も悔しいのに不満が残らないというのは珍しいです。BUSHIはマジでここ最近のベストバウトでした。ほんと、あの戦いを普段でもやれとw
メインに関しては、あんなアクシデントっぽい感じになったのが残念な気もしつつ、鈴木軍らしさというか本質が出ていてよかったと思いましたw
ファンタスティカマニアでオクムラ選手が言っていましたが、日本に来ると歓声が多くて逆に違和感があると、メキシコではブーイングの無いルードはダメなルードだそうで。
おそらくタイチはブーイングが減ってきたことを好ましく思わなかったのでしょう。
実際に今の新日でブーイングを全力で出来るのはジェイくらいですし、タイチもそのくらいのヒールに上がるためには必要なことだったのかもしれませんね。
ベストバウトは間違いなくジュニアタッグでしたね。
金丸の神業受け、デスペの狡猾さ、鷹木の迫力、そして今までにない気合いを感じたBUSHIと全員の魅力が噛み合わさっていたと思います。
特に金丸は素晴らしいの一言でした、シングルで観たいのですがIWGPは厳しいかな…ジュニアにもICのようなベルトがあれば良いのにと思う反面ベルト多過ぎ問題もあるし…BOSJまでお預けですかね笑
どうも! なるほど。たしかにタイチは「レッツゴー」のほうが最近目立ってきていたので、アレで一気に「帰れ」コールを引き戻した感じありますね。それを狙ってたのかもしれません。ジュニアタッグは本当に素晴らしかった。そう、金丸の動きの鋭さに関しては、会場の客も声に出して「さすが!」って言っていたくらいですから。世間が金丸の凄さについに気付いたかとグッときましたw